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その8. 大乗寺の隠された符丁 |
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大乗寺の障壁画には様々の符丁が隠されています。その一部をご紹介しましょう。 (1) 日本海に視線を誘う 「山水の間」は山から落ちる渓流がやがて海に注ぐ過程をテーマに描かれています。川の流れは部屋をぐるりと廻って海に至るのですが、海は日本海に視線を誘うかのように客殿の北方向に広がって描かれているのです。 (2) 襖絵の背景と大乗寺の立地条件 客殿2階「猿の間」の「群猿図」の背景は北方向に海を南方向に山を描いています。大乗寺の立地は北に日本海を、南に三川山という立地であり、「群猿図」の猿が遊ぶ絵の背景は現実の風景に符丁を合わせています。 (3) 阿弥陀仏は孔雀に乗っている 仏間に安置された十一面観音の頭頂部の化仏(けぶつ)は阿弥陀如来です。阿弥陀仏の乗り物は孔雀であるので、仏間の前に位置する部屋に阿弥陀如来を象徴する孔雀が描かれているのです。 (4)「笑」は「竹」の下に「犬」 十一面観音の頭頂部の化仏のうち後頭部に位置する大笑面の方向に「狗子の間」があり、じゃれあう子犬が描かれています。「狗子の間」には竹の下に犬を描いた絵柄があり、これは漢字の「笑」を意味して大笑面に符丁を合わせたものであり、隠された意味を含ませて描かれていると考えられています。 (5) 欄間の獅子も西を向く 「孔雀の間」「芭蕉の間」の間に欄間があり波に戯れる獅子が透かし彫りされています。獅子は西方向に向いており、仏間の十一面観音菩薩像も西に向いて安置されていることから、欄間の獅子も西方極楽浄土を暗示しているのです。 (6) 亀居山だから亀を描く 「孔雀の間」「芭蕉の間」「山水の間」と応挙の手がけた間の小壁には亀のが描かれています。(木下応受筆)これは大乗寺の山号が亀居山であることにちなんでいます。寺の山号を描いていることから応挙の描いた3部屋は客殿の中でも重要な部屋であったことがわかります。 (7) 燕が高く飛ぶ絵柄の意味 「農業の間」の小壁の「飛燕図」(山跡鶴嶺筆)は高く飛ぶ燕の姿が描かれており、「農業の間」「使者の間」「禿山の間」の順に襖の絵柄が平地→山の登り口→山頂と高くなっていく意味と符丁を合わせているかのように描かれているのです。 (8) 欄間の絵柄が意味するもの 「孔雀の間」と「芭蕉の間」の間の欄間の絵柄は波に遊ぶ獅子で、「芭蕉の間」と「山水の間」の間の欄間は松林と月の絵柄です。獅子を台座にする仏は大日如来か文殊で、天橋立の近くに文殊という地名もあり、獅子や波と松林の絵柄は天橋立をイメージさせているのではないかと思われます。 (9) 隣室へ意味をつなぐ 「農業の間」「使者の間」「禿山の間」の絵柄に平地→山の登り口→山頂と高くなっていく意味を持たせていたり、「猿の間」は山から海への地形を背景に描きながら山方向の隣室は「鴨の間」で山中の池に遊ぶ鴨が描かれるなど、隣室へのつながりを意図した画題を選んでいます。これは絵師がそれぞれを描く以前に誰かが計画を立てプロデュースしたと考えられ、応挙の棟梁としての側面がうかがえるのです。 (10)つながっている絵画の世界と実風景 「孔雀の間」に描かれた孔雀や松はほぼ原寸大で、前庭の方向に伸びた松の枝はまるで前庭に植えられた現実の木の枝と見まがうばかりに描かれています。また、「鯉の間」は応瑞が水に泳ぐ鯉を幻想的なタッチで描いていますが、「鯉の間」の前庭には池があり本物の鯉が泳いでいるのです。このように絵画の世界と現実風景との融合が意図されているのです。 |
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◆大乗寺を知る その1. 空間芸術家でもあった応挙 その2. 十一面観音と客殿 その3. 立体曼荼羅 その4. 大乗寺の立体曼荼羅(障壁画空間) その5. 客殿が曼荼羅になっていることがわかったのは? その6. 宗教的イメージの高揚を意図した間取り その7. 絵画空間と現実空間の接点 その8. 大乗寺の隠された符丁 その9. 行方知れずの絵 その10. 長くなった絵、短くなった絵 その11. 新しい発見1 二間続きで絵を見る。 その12. 新しい発見2 かすかな線は水辺となって見える… |
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