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その10. 長くなった絵、短くなった絵 |
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大乗寺襖絵のうち応挙の筆によるものは京都の画房で制作された後大乗寺に送られ、現地の表具師により表装されたようです。応挙は表装の際の注意事項などを大乗寺に書き送っています。その他の絵師の制作についてはよくわかっていませんが、芦雪の「群猿図」などは画面に絵具の垂れている跡があり、立てかけた襖に直接描いたように思えます。応挙の表装についての手紙のほか応挙と大乗寺の間では頻繁に書簡のやりとりがおこなわれているようです。当時京都と香住の距離でのコミュニケーションはなかなかに大変であったろうと想像できます。 寺側の採寸の間違いか絵師の方で寸法を間違えたのか、仕上がった絵と寺の襖の寸法に若干の違いがあったらしく、その誤差を解消するために大乗寺側でもいろいろと工夫をした痕跡が見つかっています。「山水の間」の襖を昭和20年代に補修したところ、襖の幅よりも絵の方が少し長めであったらしく長すぎた部分を後ろに巻き込んで表装されているのが見つかりました。応挙の絵を少しでも元の状態にしようとその隠れていた部分を表に出して表装し直した結果、襖の幅が少し広くなってしまいもとのところに収まりません。そこで柱の方をL字型に削って襖を収める工夫をしています。「山水の間」には幅が長くなった襖絵と実際の太さより少し細く見えている柱があるのです。 |
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◆大乗寺を知る その1. 空間芸術家でもあった応挙 その2. 十一面観音と客殿 その3. 立体曼荼羅 その4. 大乗寺の立体曼荼羅(障壁画空間) その5. 客殿が曼荼羅になっていることがわかったのは? その6. 宗教的イメージの高揚を意図した間取り その7. 絵画空間と現実空間の接点 その8. 大乗寺の隠された符丁 その9. 行方知れずの絵 その10. 長くなった絵、短くなった絵 その11. 新しい発見1 二間続きで絵を見る。 その12. 新しい発見2 かすかな線は水辺となって見える… |
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