大乗寺 円山派デジタルミュージアム
Daijyoji Temple Digital Museum of the Maruyama School
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その12. 新しい発見2  かすかな線は水辺となって見える…

「山水の間」の床の間に向かって右手には大きな湖とも海ともも見える風景が描かれています。手前から向こうに細長くゆるくカーブして先が霞んだ陸が描かれており、これが天の橋立をイメージしたものであることは素人目にもわかります。そしてその上方に金箔の色ムラにより偶然そうなったとも見える水平のかすかな線があります。見ようでは天の橋立をイメージさせる陸地が大きく湾曲してその部分につながっているとも見えます。「山水の間」の廊下側から見るとぼんやりとした箔の境目のようでもあるのですが…。
ある方のご指摘をいただき、あるとき「山水の間」の上座(一段高くなったところ)から下坐に向かって座ってみました。お殿様の視点ですね。するとどうでしょうあの金箔上のかすかな線ははるか向こうの水平線と見えるではありませんか。上座からはこの絵を斜めに見ることになるのですが、正面からだと薄ぼんやりして金箔のムラとも見えた部分が斜めから見ることで少し密度を増した結果、光る水面となって見えるのです。高い位置にあると見えた水平線ですが、どうやらお殿様の視点からするとぴったりの目線であるようです。また、天の橋立の風景もより遠近感が増して見えます。横に広がった木の枝もお殿様の目にはキリリと枝ぶりのよい木立が近景を引き締めていると見えるのです。

床の間の壁面に描かれただまし絵のような手法をはじめ、応挙の鑑賞者の視点へのこだわりには驚くばかりです。
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大乗寺を知る

その1. 空間芸術家でもあった応挙
その2. 十一面観音と客殿
その3. 立体曼荼羅
その4. 大乗寺の立体曼荼羅(障壁画空間)
その5. 客殿が曼荼羅になっていることがわかったのは?
その6. 宗教的イメージの高揚を意図した間取り
その7. 絵画空間と現実空間の接点
その8. 大乗寺の隠された符丁
その9. 行方知れずの絵
その10. 長くなった絵、短くなった絵
その11. 新しい発見1  二間続きで絵を見る。
その12. 新しい発見2  かすかな線は水辺となって見える…

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