大乗寺 円山派デジタルミュージアム
Daijyoji Temple Digital Museum of the Maruyama School
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山水図 円山応挙筆 天明7年[1787年]12月について
 この部屋は大乗寺客殿の北側に位置した部屋であり、仏教上の方位で十一面観音の西側に位置し、西方世界を守護する広目天の存在を意味する部屋となっています。
 位の高い人を迎えるための部屋で、床が一段高くなった座が用意されています。南側に隣接する「鯉の間」は控えの部屋としての役割をもち、東側の「藤の間」は要人を守る武者隠しとして設けられています。座には床の間と違い棚が設けられ、他の部屋に比べて造作に凝った部屋となっています。
 山水図は深山幽谷から流れ落ちる水が滝となり川となって、大地を潤しながら大海へと注ぐ壮大な様を金箔地に墨で描いており、身分の高い人を迎える部屋らしく他の部屋に比べいっそう高潔な印象を与えます。この部屋の障壁画は高い場所を仰ぎ見る視点や低い場所を見下ろす視点、遠くを水平に見渡す視点と異なる視点を取り込みながら描かれています。
 部屋の南西隅で襖が直角に接している部分の天井に近いところに描かれた高山から流れ出た水は、右下の谷に注がれ一旦画面から消えます。その右下に隠れた川の流れは畳面をぐるっと廻り、今度は南面右の湖または内海に注がれます。内海とすると天の橋立(大乗寺東方50km)のようにも見えます。やがて海峡から広大な海につながっています。この時海を眺める視点はそれまでの右側画面で強調されていた上下の落差ではなく、広く水平に見渡す視点で描かれていることがわかります。同時に大乗寺の北方にある日本海へと視線を導きます。低い床に座った人からは高山は仰ぎ見るように描かれており、また海の水平線は上座の一段高い床に座った人の視線に合わされて描かれています。このようにさまざまな視点のマジックを駆使して応挙はこの部屋を構成しているのです。

◆板や畳の面を水面と感じさせる巧みさ
 この部屋の床の間や違い棚のあるところの壁面にも風景が描かれていますが、よく見ると床の間の畳や床板を水面と見立てた構図となっています。夕暮れとともに畳の目が水面をおおうさざ波のように見えたり、床板に写る小島の楼閣はまさに明鏡止水の水面風景であるふうに見えるなど、そこここに視覚のマジックを使った面白さが用意されています。(写真1)

◆どちらから見てもきちんと繋がる構図
 床の間と違い棚の部分の壁面はひとつの構図につながった絵柄となっています。床の間と違い棚の境に壁があって、その壁の両面にも山水の風景が描かれていますが、壁面が直角に接する部分には床の間の側から見ても、違い棚の側から見てもつながった構図となっています。(写真2、3)

◆削られた柱
 襖絵の表装をやり直した折、絵を内側に巻き込んだ部分が見つかりました。その隠されていた部分を出して新たに表装し直した結果、襖の幅が少し広くなってしまいました。その襖を入れるために柱の襖の入る部分を削って襖を収めています。山水の間には実際の太さよりも細く見える柱があるのです。

小壁 遊亀図 木下応受筆について
 「山水の間」西面の欄間と長押の間に小壁があり、木下応受の筆になる遊亀図が描かれています。大乗寺の山号である「亀居山」に因んだ絵柄であるといわれており、悠然と浮かぶ亀の姿が高貴な部屋のゆったりした時間を演出しているようにも見えます。

欄間 透かし彫りについて
「芭蕉の間」と「山水の間」の間
 松林と月の絵柄です。松林は「波と獅子の欄間」と同様に天の橋立を連想させます。洗練された形に切り抜かれ、隣の部屋からの光に浮かび上がる効果を考えているようです。透過する光の強弱による影が様々に表情を変え、時々の浜辺の情景を想像させます。また木目が波紋状になっており、亀の遊ぶ池の水面に写った月と松林ともいわれ、小壁に対応させた絵柄となっています。


前庭より山水の間を見る
前庭より山水の間を見る

写真1
写真1

写真2
写真2

写真3
写真3


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