大乗寺 円山派デジタルミュージアム
Daijyoji Temple Digital Museum of the Maruyama School
◆芭蕉の間(郭子儀の間) 解説 HOME > 客殿検索 > 芭蕉の間 > 解説

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障壁画「郭子儀図」 円山応挙筆 天明7年[1787年]について
 「芭蕉の間」も「孔雀の間」と並ぶ前庭に開かれた部屋です。この部屋は中国の故事にちなんだ画題である郭子儀(かくしぎ)を描いています。大乗寺ではこの部屋を芭蕉の葉で遊ぶ子供達が描かれているので「芭蕉の間」と呼んでいますが、「郭子儀の間」と呼ばれる場合もあります。
 さて、画題となっている郭子儀ですが、唐の時代の武将であり政治家で楊貴妃を寵愛したことで有名な玄宗皇帝につかえ、安禄山の乱を鎮めたことで名を上げた人です。玄宗皇帝のほか粛宗、代宗、徳宗と4人の皇帝につかえ、徳宗からは父を慕うように尚父(しょうふ)と呼ばれ尊敬されたといいます。長寿で子供や孫にも恵まれたことから、おめでたい画題としていろいろな画家の筆で描かれています。戦乱の絶えない歴史上の時代のそれぞれで郭子儀は平和と安定の象徴として、描かれ続けてきたのです。
 このように大乗寺客殿の中で「芭蕉の間」は仏教上の方位で十一面観音の南にあたり、郭子儀をテーマとすることで政治を司る増長天をイメージさせています。
 この「芭蕉の間」も金箔張りの襖で構成されていますが、「孔雀の間」とは対照的に金箔地に艶やかな絵具を使って描かれ、年数を経た今日でも当時の鮮やかさを失っていません。郭子儀は穏やかな表情で遊ぶ子供達を見守っており、全体に慈愛に溢れた画面となっています。郭子儀が身に着けている白い衣や遊ぶ子供達を描くのびのびとした筆使いは、この時期の応挙の円熟した充実ぶりを感じさせてくれます。

◆空間を飛び交う視線
 郭子儀の温かなまなざしは直角方向の襖に描かれた子供達に注がれているように見え、目の前の空間を郭子儀の視線が走っていることになります(図1)。このように本来平面である絵が立体空間につながることを意識して描く手法や、どの方向から見ても自分の方を見ているふうであったり、見る方向にあわせて子供も右に左に身をかわすふうに見える(図3)、「八方にらみ」といわれる手法は応挙が得意とするところです。ここ大乗寺でも様々に試みています。それらをいくつ発見できるかというのも、大乗寺訪問の楽しみのひとつです。

◆芭蕉の葉は紙の替わり
 襖絵のほぼ中央あたりで芭蕉の葉に絵をかいている子供は、「唐時代の僧、懐素は書が上手であったが子供の頃貧しく、紙(箋)を買うことができず、芭蕉の葉を紙替りにした」という中国の故事に基づいた画題です。郭子儀図の他の子供達の絵もそれぞれ故事に従って描かれているのかもしれません。大乗寺の障壁画を鑑賞しながら、絵に描き込まれた歴史的な意味のなぞ解きに思いを巡らすのも楽しい鑑賞方です。

小壁 遊亀図 木下応受筆について
 「芭蕉の間」の東面、南面の長押上の小壁に、木下応受の筆による遊亀図が描かれています。木下応受は応挙の三男で、この絵は若い応受が応挙の指導下で描いたと想像できます。


郭子儀
郭子儀

図1
図1

図3
図3


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